KYOCERA Finecam SL300R
自分が初めて買ったデジカメは、PanasonicのLumix初号機、DMC-F7だったのだが、これは単に買っただけで、ろくに写真を撮るということをせずに部屋の片隅に放りっぱなしにしていた。今思えばなんというもったいないことだったろう。
けれども、当時はまだ小説を書いていた。そちらの方で『表現する手段』を持っていたために、写真の方へ興味が向かなかったのだろう。
それから数年して、確か自分でレンタルサーバを借り、Movable Typeをインストールしてブログを始めた。書く方はいくらでも書けるが、それだけだと寂しいということもあって、写真を使いたいと思うようになった。そこで久々にF7を引っ張り出したのだが、なんと液晶が割れていた。撮れることは撮れるのだが、あまりにも心許ない。
元々、新しもの好き、かつガジェット好きであったこともあり、「持ってるものが壊れた」となると、俄然新しいモノが欲しくなってくるという悪いタチである。
さっそく当時のデジカメ事情をリサーチし、最終的に二つの機種を候補として選んだ。
ひとつは、RICOH Caplio G4で、性能的にはこちらの方が良いと思っていた。
もうひとつが、京セラのFinecam SL300Rだった。最終的にはこちらを購入することにした。
エントリ右肩、『今日の一枚』に表示されているのがSL300Rなのだが、いわゆるスイバル式の構造をしている。撮影時には本体をねじって、レンズを被写体方向に向けることになる。
性能的にはCaplioの方が上と思っていながら、何故こちらを選んだのかというと、話はものすごく単純だ。俺はこの、
ぐりっ
がやりたかったのだ。
ま、アホな話ですが。
しかし結局は、こちらを買っていてよかったと思っている。カード型で薄くコンパクトなボディは、実は今現在でも十分通用するレベルだと思う。ワイシャツのポケットに無造作に放り込める小ささと軽さなのだからして。
肝心の写りも、条件次第だが気に入っている。
2008年に撮った一枚。とあるところの、地下から地上に抜ける階段を撮ったものだ。
この一枚の持つ雰囲気が、実に良い。自分の感性にハマる。
単に彩度が低いとか、色乗りが悪いというか色が抜けてるようだとか、ノイズが多いとか、一枚目を見ても分かるようにホワイトバランスが転倒しやすいとか、つまりは性能がどこかしら悪いからの写りなのだが。それでもこの一枚は、奇跡的にそれらが見事に“ハマった”感がある。当時はそのフィルムのことを知らなかったが、どこかしらフィルムのAGFAっぽさがあるような気もする。レトロな、トイに近いレベルのカメラで撮ったような感じもする。
この写りがものすごく気に入ってしまったのである。
おかげで、使用するカメラが一眼レフに移行した今でも、SL300Rは、手放すどころか予備機をヤフオクで入手してしまったほどだ。予備バッテリーも買ったし。ROWAで。
狙ってこの写りが出せないのが今のところの悩みなのだが……
はてなfotolifeにアップロードしてある、このデジカメで撮影した写真のうち、もっとも古い日付の一枚。fotolife上にはもっと古く扱われている写真もあるが、それらは全て、上のものと同様に日付データをすっ飛ばしたためのものだ。
縮小するとごまかされてしまっているが、ページへジャンプしてご覧いただきたいと思う。こういうレトロな雰囲気の写りを気に入る人は、たぶんいると思うのだ。
なお、この日記の日付は、カメラの発売日に合わせてある。実際に書いているのは、2009年3月のことである。